岩手県胆江地域の情報を扱う地方紙。紙面リード記事、市町村や歳時記の紹介。
胆江日日新聞
pickup : 「笑顔」取り戻した場所 拠点閉所も「仲間と共に」(ホープラザ奥州)
投稿者 : tanko 投稿日時: 2018-03-11 09:38:01 (310 ヒット)

 内陸で避難生活を送る被災者たちの支援拠点「ホープラザ奥州」。それぞれが悩みを打ち明けたり活動を共にしたりしながら少しずつ心の傷を癒やし、「自立」へと歩みを進めてきた。3月末で閉所となるが、利用避難者たちは「残念だけれど、ここで出会った皆とは今まで通り交流を続けていきたい」と前を向く。

 山田町出身の小野寺亮子さん(76)=金ケ崎町西根在住=は、自宅で被災した。金ケ崎町に住む長女(46)を頼り避難してきたが、当初は毎日のように郷里へ戻りたいと願っていたという。今は同町内のみなし仮設に暮らす。
 7年の歳月で、気持ちに変化が表れるように。夫勲さん(82)も高齢となり「向こうで自宅を建てる見通しも立たない。娘にはなるべく世話にならないようにしているけれど、何かあった時は頼らなければならない。健康には気をつけているけれど…」と複雑な心境を明かす。
 「3・11」は、何年たっても悲しい思い出だ。玄関を開け放して逃げた先で見た変わり果てた街の光景は、忘れようにも忘れられない。「いつまでも引きずらないようにはしているが、思い出してしまう。当たり前に、ずっと山田で暮らしていくと思って疑わなかったのだから」。堪えていた涙があふれた。
 それでも境遇が近い仲間同士の交流が心の支えになった。奥底にしまい込んでいた悩みを打ち明けられ、徐々に笑顔を取り戻した。ホープラザの閉所について「ここで出会った人たちは、みんな優しくて親切。これからも付き合っていきたい大切な仲間」とほほ笑む。これからは「主人も私も高齢だから、今まで通りいられたらいい」と望んでいる。
 開所から5年8カ月の中で、利用者たちが取り組んできたのが弦楽器「大正琴」。陸前高田市出身の村上貴和子さん(72)=前沢区白山在住=が講師となり、寄贈された大正琴で練習を始めた。初めて顔を合わせるメンバーたちも大正琴を通じて心を通わせ、腕を上げた。琴の音色と一緒に笑い声も響くようになった。村上さんは「誰かが間違えば笑うし、冗談を言い合える明るい雰囲気になった」と振り返る。
 「全員で練習を重ねて上達した。次は何の曲を教えようか楽しみ」と村上さん。津波で家族を失い、内陸での避難生活を送る中で心のよりどころが仲間と出会えるホープラザだった。「義務的な集まりでもないし、楽しく過ごせる場所」と活動を思い起こす。「事務所がなくなれば大変だと思っていたけれど、どこか場所を決めて集まろうと話し合っている」と前向きだ。
 震災の年に生まれた孫の成長を間近にするのも楽しみの一つ。故郷に戻りたいと願う気持ちにも、心の中で少しずつ折り合いを付けている。「仲間たちでこれからも大正琴を続けるつもり。助けが必要な場面もあると思うけれど、少しずつでも自分たちで自立する段階にきているのかな」ーー。そう気丈に明かした。
写真=避難者たちの傷ついた心をつないだ大正琴。みやびな音色が途絶えることはない


購読のお申込み
新聞広告掲載料金とサイズ案内
困ったときの問い合わせ先
随想・寄稿・文芸などへの投稿
リニアコライダー
胆江地方について
写真

当ホームページに掲載の記事・写真の無断転載を禁じます。すべての著作権は胆江日日新聞社に帰属します。
〒023-0042 岩手県奥州市水沢柳町8 TEL:0197-24-2244 FAX:0197-24-1281

ページの先頭へ移動