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胆江日日新聞
pickup : 東日本大震災から10年 「ただ声に耳傾ける」 漂流ポストの赤川勇治さん 被災地 一歩踏み出すまで(陸前高田市)
投稿者 : tanko 投稿日時: 2021-01-03 09:48:56 (1627 ヒット)

 関連死も含め5143人が命を失い、1111人の行方が分からず、家屋被害(全半壊)2万6079棟という未曽有の被害(20年11月30日現在)を本県にもたらした東日本大震災から、間もなく10年を迎える。あの日、大津波にのみ込まれ、人々の営みが奪われた太平洋沿岸部は、道路や土地のかさ上げ、防潮堤の整備などが進み、その姿を再び大きく変えてきた。しかし、「まだまだ一歩を踏み出せない人が多い」。陸前高田市広田町で「漂流ポスト3・11」を開設する赤川勇治さん(71)=水沢台町=は被災地に心を寄せ、「いつまでという区切りはない。これからもただ声に耳を傾けるだけ」と思いを吐き出せる場所づくりに心を砕く。

 「老後を過ごす場所を」と広田半島の端に位置する根岬地区に山林を購入し、震災の前年にカフェを開業。2011(平成23)年3月11日は、冬季休業を終えて営業を再開させる準備のため現地にいた。大きな揺れの後、携帯ラジオから流れてくる「壊滅」「壊滅」の連呼に想像が追い付かなかった。
 道路が寸断し、近所に数日身を寄せた。避難先の食料が少なくなり、買い出しのため水沢の自宅へ向かう途中で目にした光景が忘れられない。全国から集まった警察官や消防職員が竹竿を手に捜索を続ける脇には、泥まみれの毛布やブルーシートを掛けた遺体の列。「あれを見たら鬼も仏になる」と声を詰まらせる。自分も周囲の優しさに助けられた命。岩手に恩返しをという思いが沸き上がった。
 被災した常連客の要望で、震災の半年後にはカフェを再開。訪れる人たちの話にじっと耳を傾けた。そのうち、カフェに足を運べない人へと思いが向いた。「手紙なら、どこにいても、相手のことを思い浮かべて気持ちを吐き出せる」。その手紙を受け取る「ポスト」になろうと決めた。
 庭先に「漂流ポスト3・11」の看板を掲げて、もうすぐ8年。受け入れた手紙は約800通に上る。しかし震災から10年を目前にしてもなお、手紙の宛て名は震災で命を失った人よりも、病気や事故などで亡くなった人が多い。
 手紙を書ける人はまだいいーー。悲しみや苦しみは10年で区切りをつけられるものではない。被災地に残る深く大きな傷が癒えるには、まだまだ長い時間が必要だと感じる。
 せめて節目の年に何かをと、供養碑の設置を構想している。手紙を書き、赤川さんの下へと足を運んだ人たちが話し掛ける「ポスト」の足元で、訪れた人たちを見守る存在になるよう願いを込める。
写真=突然失った大切な人への思いをつづった手紙を「漂流ポスト3・11」で受け付けている赤川勇治さん


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