前沢下小路地内の広場にかまくらがお目見えした。広場北側の空き家へ埼玉県から昨年移住してきた西村三男さん(63)悦子さん(58)夫妻が手掛けた。かまくらの中と周囲をろうそくで照らす雪明かりイベントも行い、雪と火が生み出す神秘的な空間で地域住民らを魅了した。
三男さんは秋田県の出身。昨年12月からの大雪で、ビニールハウスが倒壊したり除雪作業中のけがなどが伝えられる中で、「本来雪は楽しいものだと知ってもらいたい」と思ったという。
地域の人たちに楽しんでもらおうと、ふるさと秋田で経験があったかまくら造りを計画。昨年末から作業を始め、自宅周辺の雪を集めて20日間ほどかけて大人の背丈ほどのかまくらと周囲の装飾を仕上げた。
かまくらは、内部に高さ1・5メートルの空間を設け、秋田県の風習に基づき水神様をまつる祭壇も設置した。ろうそくをともすため、周囲を取り囲むように小さな雪洞を作った。
かまくらを造った広場は、山下有隣青少年会館の跡地。かつて地域住民が集まる場所だった広場で再び楽しい時間を過ごしてもらおうと、新年の雪明かりイベント(今月2、5、11日)を企画した。
イベント開催は、夫妻にとっても初めての体験。近隣住民の呼び掛けもあり、子どもから大人まで大勢が広場を訪れ、雪に炎が揺らめく様子を楽しんだという。
点灯最終日の11日は、西村さん夫妻と住民が一緒になってろうそく約80本をともした。日暮れとともに炎のオレンジ色が際立つ空間が広がり、記念写真の撮影を楽しむ人たちも。甘酒とコーヒーを振る舞う住民もおり、にぎやかな時間を過ごした。
ろうそくに火を付ける手伝いをした前沢下小路の千葉佑誓ちゃん(4)は「かまくらを見ていて幸せな気分になった」と満足げ。
三男さんは「子どもの頃に造って以来だったが、見た人たちが喜んでくれてうれしい。リクエストがあれば来年もやりたい」と意気込む。悦子さんは「造るのは大変だったけれど、最初にろうそくを点灯した時は幻想的な光景に感動した。電飾とは違うろうそくの炎を見て、皆さんも癒やされたのでは」と笑顔を広げた。
写真=大雪を利用し美しい空間を生み出したかまくらの雪明かり
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