岩手県奥州市、金ケ崎町の地域紙。第2回ふるさと新聞アワード(2022)グランプリ & Googleアワード受賞。
胆江日日新聞
pickup : 寿安堰 科学的に探る 国立天文台OBの大江昌嗣さんら 検証成果を冊子に(顕彰会10周年)
投稿者 : tanko 投稿日時: 2024-04-16 09:40:15 (248 ヒット)

 江戸時代初期に開削され、現在も使用されている農業用水路「寿安堰」。国立天文台OBでNPO法人イーハトーブ宇宙実践センター理事長の大江昌嗣さん(83)=水沢川端=らは、堰建設に用いられた技術を科学的に検証した成果を冊子『胆沢扇状地のむかし』にまとめた。冊子を作製した後藤寿庵顕彰会(高橋栄蔵会長)は、希望者に無料配布している。大江さんや高橋会長は「土木遺産に登録されてもおかしくない、非常に高度な技術が使われている」と、先人たちの知識や技術の高さをたたえている。

 寿安堰は、伊達政宗の家臣で現在の水沢、胆沢の一部を治めていた後藤寿庵が指揮を執り着工。しかし、キリシタン領主だったため、禁教令に基づく取り締まりが強まる中、堰の完成を見ないまま領地を去っている。
 山形県出身の大江さんは、天文学者として水沢緯度観測所(現・国立天文台水沢VLBI観測所)に赴任。自宅近くを流れる寿安堰を見ながら、なぜ安定的に水が流れ続けているのか不思議で仕方なかった。
 20(令和2)年、長年気になっていた謎を解き明かそうと調査を実施。理系分野に長らく身を置いた経験を生かし、科学的観点で水路の高低差や経路を丹念に調べた。
 寿庵顕彰会設立10周年に合わせ、同会は記念式典で大江さんの講演を行うとともに、調査成果を1冊にまとめた。多くの人たちに読んでもらおうと、1000部余りを製本。市内の公共施設などを窓口に無料配布している。
 同NPO法人が運営している水沢星ガ丘町の奥州宇宙遊学館でも企画展を開催。法人事務局長の齊藤一さん(74)=水沢川端=が制作した胆沢平野の立体地図などを展示し、複雑な地形をどのように克服し、堰のルートを決定していったかを知ることができる。
 これまで寿庵については、歴史や宗教学的な側面で研究されてきたが、科学的に堰の構造などを調べ、その功績に光を当てた例はあまりなかった。
 大江さんは、特にも段丘が続く扇状地南側の地形を克服した測量と開削の技術の高さに注目。「測量機器が発達した今の時代であっても、恐らく同じルートを選んでいたと思う。玉川上水や琵琶湖疎水よりも前の時代にこれだけの技術を投入できた点は、もっと注目されるべきだ」と語る。高橋会長は「県外から移住し、この地に暮らし続けている大江先生が、ここまで当地のことを掘り下げて調べてくれるのはとてもありがたい」と感謝していた。
 冊子は水沢、胆沢、前沢の一部地区センター、胆沢平野土地改良区、市内図書館(衣川セミナーハウス図書室除く)、カトリック水沢教会、胆江日日新聞社などで配布している。問い合わせは、同顕彰会事務局の水沢南地区センター(電話25・7990)へ。
写真=冊子や胆沢扇状地立体地図を手にする(右から)大江昌嗣さん、高橋栄蔵会長、齊藤一さん


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