トヨタ自動車東日本（株）岩手工場（藤井雅則工場長）が、昨年１２月から生産を開始している高級ブランド・レクサス新モデルのスポーツタイプ多目的車（ＳＵＶ）「ＬＢＸ」のお披露目イベントは１７日、金ケ崎町西根森山の同工場で行われた。「新型ＬＢＸ〜東北と走る〜」と銘打ち、トヨタ自動車の豊田章男会長によるトークショーが行われたほか、生産や検査の工程が報道陣向けに初めて公開された。

　同工場は昨年１０月に操業３０周年の節目を迎え、現在はＬＢＸの他にハイブリッド車「アクア」「ヤリス」、ＳＵＶ「ヤリスクロス」を生産。昨年１ー１２月の生産実積は約２９万台だった。
　トヨタ自動車東日本としては、ＬＢＸが初のレクサス生産モデル。欧州や日本を中心に約６０カ国を仕向け先としており、国内では今年３月末時点で約５２００台を販売した。専用の生産工程として、異音や塗装の厚みなどを検査する「煌（きらめき）工程」を新設している。
　岩手工場の従業員がレクサスの別モデルを生産している愛知県のトヨタ自動車田原工場へ“短期留学”し、検査に必要な考え方や技能を習得した検査員を配置して品質の確保に努めているという。
写真＝報道陣向けに初公開されたレクサスの新モデル「ＬＢＸ」の検査工程

「スニーカーのような車」目指した
トヨタ自動車・豊田章男会長
ＬＢＸ生産　思い語る
佐々木雅弘さんとトークショー

　トヨタ自動車の豊田章男会長（６７）は１７日、金ケ崎町西根森山のトヨタ自動車東日本（株）岩手工場で開かれた高級ブランド・レクサスの新モデル「ＬＢＸ」のお披露目イベント「新型ＬＢＸ〜東北と走る〜」のトークショーに参加。ＬＢＸの開発にマスタードライバーとして関わっており、「スニーカーのような車を目指した」と強調。本県で生産する意義について「岩手県の特産品の２５％が自動車であり、日本を元気にするためには改めて自動車産業が必要だと思う。皆さんの頑張りが幸せにつながる」と従業員へ呼びかけた。
　イベントには岩手工場従業員や来賓、取引先の関係者ら合わせて約１５０人が出席。トークショーは、豊田会長と本県出身のレーシングドライバーでＬＢＸの開発にも携わった佐々木雅弘さん（４８）が登壇した。
　開発に当たりスニーカーのような車を具現化していくため、ファッションブランドのスニーカーをイメージして、エンジニアチームと何度もミーティングを重ねたという。「スーツにも合い、カジュアルにも履けるスニーカーのイメージ。速く走る技術だけでなく、乗り心地がもっと良くなるなど自身の持てる知識をＬＢＸに注入した」と佐々木さん。「本県出身者として、豊田会長のＬＢＸを『岩手出身にしたい』という言葉が実現して感謝しかない」と話した。
　豊田会長は１６日に本県入りし、佐々木さんと小岩井農場周辺などをＬＢＸで走行したという。「道が車を作り、道が人を鍛えるのだと思う。佐々木さんがどんな道を走ってきたかを知るためにルーツを体感することができた」と豊田会長。「車は多くの人が協力してやっと１台ができる。１人の力ではできないのが車という商品。出発点となる岩手の道を訪ねたいという思いがあった」と力を込めた。
　イベント終了後、報道陣の取材に応じた豊田会長は「花が咲き始めた岩手の道を走り、車づくりにいい道だと感じた。美しい岩手山や桜の景色は復興後の日本の姿を全世界に発信する良い景色で、ラリースポーツに活用できるのでは」と構想を打ち上げた。
　達増拓也知事は「地域経済への大きな力であり、クオリティーが高い車を岩手で生産できるのは素晴らしいこと。県として従業員の生活をしっかりと支えていきたい」。高橋寛寿町長はトヨタ自動車東日本と町との共同事業で建設した森山室内練習場に触れ、「車の生産だけでなく地域貢献にも力を入れてもらい感謝。町として今後も手を携えていきたい」と述べた。
写真＝レクサスの新モデル「ＬＢＸ」のお披露目イベントでトークショーに臨む豊田章男会長（右）と佐々木雅弘さん