水沢斉の神地内に今月、「かぐや姫」というユニークな名前の事業所が誕生した。▽山林での竹の増殖▽子どもがいない世帯での墓じまい問題▽化石燃料に代わるエネルギーの確保ーーなど、一見共通点がなさそうな課題を、竹の有効活用によって少しでも緩和しようという狙いで、事業の普及を図る。
事業を始めたのは、南部鋳物で作ったアイデア商品「ザ鉄玉子」の開発元、サカモト商会=水沢天文台通り=の坂本英三さん(72)と、農機具メーカーに勤務していた水沢秋葉町の高橋陽悦さん(66)。スポーツ仲間の2人は、それぞれが培ったノウハウを生かし、竹の有効活用に向けた取り組みを進めることにした。
鉄玉子などのアイデア商品を発明した坂本さん。近年は人生の終末手続きにも関心を持つように。墓地手配などに関するNPO法人を設立し、課題解決に取り組んでいる。
高橋さんは会社員時代の経験を生かし、園芸施設関連の資材や水耕栽培プラント、ドライフルーツの販売事業を展開。取扱商品の中に竹を燃料にできる多目的ストーブがあり、普及できないか思案していた。
2人が着目した竹は、工芸品や日用品の材料だった。しかしプラスチックなど代替素材が普及。伐採や加工に手間がかかる竹は、次第に使われなくなった。
山林管理も行き届かなくなり、荒れ放題の竹林が増加。竹は繁殖力が強く、放っておけばどんどん増え、広葉樹のように根を深く張ることがないため山の保水力は低下する。これらの問題は“竹害”とも呼ばれ、林野庁も竹の利活用推進に向けて動いている。
坂本さんは、単身世帯や核家族の増加を背景とした、「墓じまい」問題にも関心を寄せていた。竹の有効活用と現代の墓事情問題を同時に解決できる方法を模索。考えついたのが「竹の墓」だった。墓標(木標)の下に土葬していた、かつての墓の姿にヒントを得た。
矢巾町の業者が開発した竹専用の塗料で防水加工。人間用のほかペット用も用意した。
竹の墓に使用できない細い部分などは、高橋さんが取り扱っている竹が使えるストーブ、ボイラーの燃料資材として販売する考え。竹3本で灯油18リットルに相当するエネルギーがあるほか、燃えかすの竹炭は土壌改良材として活用できる。
竹の加工は、米菓工場だった建物を知人から借りて行う。坂本さんは「竹は捨てるところがない万能素材。うまく軌道に乗れば、仕事をリタイアした人たちにも伐採作業などに参加してもらい、ひいては地域おこしにつなげたい」と話している。
写真=竹の有効活用を図るための事業を始めた坂本英三さん(右)と高橋陽悦さん
岩手県奥州市、金ケ崎町の地域紙。第2回ふるさと新聞アワード(2022)グランプリ & Googleアワード受賞。
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